【マーケティング×AI活用】経営者が知るべき「釣り道具より釣り方」の発想~AI活用が広がる今、なぜ成果を出す企業と出せない企業に差が生まれるのか~【第3回】

本当に重要なのは「釣り方」である
前章では、AIが大量の情報処理や効率化を得意とする、非常に優秀な「釣り道具」であることをお話ししました。
しかし、どれほど優れた道具を持っていても、それだけで成果が保証されるわけではありません。
釣りの世界でも、高性能な釣り竿を持っている人が必ず大物を釣れるとは限りません。
魚がどこにいるのか。
何を狙うのか。
どんなタイミングで釣るのか。
こうした「釣り方」が結果を大きく左右します。
AI時代のマーケティングも同じです。
本当に重要なのは、AIという道具そのものではなく、それをどう使い、どのような価値を生み出すかという「釣り方」なのです。
同じAIを使っても成果に差が出る理由
最近では、多くの企業や個人が同じような生成AIを利用できるようになりました。
つまり、道具そのものには大きな差がなくなりつつあります。
それにもかかわらず、成果を出す人とそうでない人がいるのはなぜでしょうか。
私はその違いは「問い」にあると思っています。
何を知りたいのか。
誰に価値を届けたいのか。
どんな未来を実現したいのか。
こうした目的や考え方によって、AIから得られる答えは大きく変わってきます。
サントリーで16年間ブランドマネージャーとして仕事をしていた頃も、同じ市場データを見ながら、人によって全く違う発想や戦略が生まれていました。
差を生み出していたのは、データそのものではありません。
「何を見るか」「何を感じるか」という人間側の視点でした。
私は、AI時代になってもこの本質は変わらないと思っています。
AIには真似できない人間の価値とは
AIは過去の膨大な情報を学習し、整理することが得意です。
一方で、人間の感情や違和感、直感、そしてひらめきは、まだAIには簡単には再現できません。
私はサントリー美術館で7年間仕事をし、300以上の展覧会を見る機会に恵まれました。
その経験を通じて感じたのは、新しい価値は論理だけからは生まれないということです。
人が「美しい」と感じる。
「面白い」と思う。
「なんとなく気になる」と感じる。
そうした感情の中に、新しい発想の種が隠れていることが少なくありません。
だから私は、AI時代になればなるほど、人間らしい価値が重要になると考えています。
ひらめき力。
感情を感じる力。
そして、人の本音に寄り添う力。
これらは、人間だからこそ発揮できる大切な能力です。
マーケティングの核心は顧客の感情や本音を理解すること
私は42年間のサントリー人生を通じて、
「マーケティングこそ経営の核心である」
という考えに至りました。
なぜなら、マーケティングとは単なる販売技術ではなく、人を理解する営みだからです。
人は必ずしも論理だけで行動するわけではありません。
「なぜこの商品を好きになるのか」
「なぜ他社ではなく、このブランドを選ぶのか」
その背景には、本人も気づいていない感情や本音が存在します。
私はこれを「インサイト」と呼び、さらに顧客の感情や本音をつかむ姿勢を「感情キャッチ型マーケティング」と名付けました。
AIがどれほど進化しても、顧客の隠れた本音を理解し、新しい価値を生み出すのは人間の役割です。
だからこそ、AI時代のマーケティングにおいて最も重要なのは、「道具」ではなく「人間」なのです。
そして、その人間らしい価値を最大限に発揮するために、私たちはどのような力を磨いていけばよいのでしょうか。
次の章では、AI時代に経営者が身につけたい3つの力について考えてみたいと思います。

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